Report
相談レポート
Web広告運用の自動化に関する技術相談
「AIに広告運用を任せられないか」という相談から始まり、セキュリティ、運用形態、MCPとAPIの制約を一つずつ確かめていった一日。最後には、定期実行はClaude Codeなどの既存機能でまかなえるという発見までたどり着きました。
今回の相談相手
今回お話ししたのは、Webマーケティングで集客支援をされている兼田さん。クライアントの広告運用を日々支えるなかで、「管理画面の操作やデータ分析、もっと楽にできないかな」という思いが膨らんでいったそうです。
やりたいことはシンプルでした。
広告管理画面からデータを引っ張ってきて分析し、キーワードの追加や予算の調整まで、AIに任せられる仕組みをつくりたい。
GoogleやMetaの広告アカウントとAIツールをつなぎ、AIの指示で管理画面を動かせる環境をゴールに据えていました。
ただ、プロジェクトはまだ真っ白な状態。「どこから手をつければいいのか」「セキュリティは大丈夫なのか」——そのあたりの霧を晴らすところから、今日は始まりました。
まず気になったのは「安全なのか」
最初に話題にのぼったのは、やっぱりセキュリティでした。
「AIに広告アカウントを触らせて、勝手なことをされたり、情報が漏れたりしないか」。当然の不安です。ここを一緒に整理してみると、ローカル環境のなかで処理が完結する構成なら、リスクはかなり低く抑えられることが見えてきました。
もちろんゼロではありません。APIトークンが流出したり、PCがマルウェアに感染したりすれば話は別です。ただ逆に言えば、PCそのものが乗っ取られない限りは、基本のプロトコルさえ守っておけばリスクは許容範囲——というところで、二人の認識が揃いました。ここで一つ、肩の力が抜けた感覚がありました。
「どう動かすか」で見えてきた分かれ道
次に考えたのは、この自動化をどう「起動」するか。ここには大きく二つの道がありました。
一つは、兼田さんが必要なときに手でAIツールを立ち上げる手動起動。もう一つは、毎日決まった時間に勝手に走ってくれる定期実行です。
魅力的なのは当然、後者の定期実行。でも、これを自前で組もうとすると話が一気に重くなります。決まった時間に処理を回すには24時間動き続けるサーバーが要るし、個人のローカルPCをずっと立ち上げっぱなしにするのは現実的じゃない。サーバー管理やGitHub Actionsのようなインフラを、一から用意する必要が出てきます。
「そこまで最初からやるのは、ちょっと大変そうですね」。この時点では、定期実行はいったん脇に置いて、まずは操作系の自動化から手をつけよう、という方針で一致しました。
掘り下げてわかったMCPの壁
方針が決まったので、では具体的にどうGoogle広告とつなぐか。ここで候補に挙がったのが**MCP(Model Context Protocol)**です。
ところが調べていくと、ここに思わぬ壁がありました。Google広告のMCPは読み取り専用。つまり、データを見ることはできても、キーワードの追加や予算の変更といった「書き込み」の操作はできないのです。それをやるには、別途APIを直接叩く必要があることがわかりました。
読み取りと書き込みで、まったく違う技術的アプローチが要る——これは今回の大きな発見でした。念のためPipedreamやCDataといった外部ツールも当たってみましたが、どれも「読み取りは簡単、でも書き込みまでとなると難易度もコストも跳ね上がる」という同じ壁にぶつかります。
ここから、進め方の輪郭がはっきりしてきました。
- まずは操作系の自動化から — 広告アカウントとつなぎ、キーワード追加や予算変更ができる環境をつくる
- 落ち着いたら定期実行へ — 操作系が安定してから、定期実行の運用を検討する
そして着手の順番としては、審査や設定の難易度を踏まえ、Google広告のAPI操作環境を整えるところから。ただしこれには、操作権限を得るためのAPIトークンの発行と、承認審査というプロセスが待っています。
相談会のその後
実は、この話にはもう少しだけ続きがあります。
相談会が終わったあと、Claude CodeなどのAIツールには、そもそも定期実行の機能が最初から備わっていることがわかったのです。これは兼田さんにもすぐお伝えしなければ、と改めてご連絡しました。
つまり、あれだけ「大変そう」と脇に置いた定期実行は、自前でサーバーやcronを用意しなくても、ツール側のスケジュール機能でまかなえるということ。定期実行そのものが無理だったわけではなく、「インフラを一から組む」という最初の前提以外にも道があった——そんな発見でした。
もちろん、これはあくまで操作系の自動化が一通り動くようになってからの、次の一歩。それでも、「後からちゃんと取り入れられる」とわかっているだけで、進め方の見通しはずいぶん明るくなります。
相談を終えて
最終的に兼田さんには、全体の見通しと、進めるためのドキュメントや他の方が書いている記事を整理してお渡しさせていただきました。
「最初はハードルが高そうに見えた定期実行が、Claude Codeなどの既存機能で後から取り入れられるとわかって安心した」というお声をいただけたのが印象的でした。操作系の自動化を先に進めること、MCPとAPIの役割分担——今回のやりとりを通して、進むべき方向がくっきりと見えた一日になりました。